このページでは当クリニックで行っている、特色ある治療を中心に説明いたします。薬の治療と組み合わせることで効果も期待できます。
花粉症・アレルギー性鼻炎に対する治療
花粉症・アレルギー性鼻炎の治療は、大きく5つに分けられます。@まず原因物質である抗原との接触を避けること、Aもっとも一般的な薬による治療、Bレーザーなどを用いた手術療法、C注射による減感作療法、Dスギ花粉症に対する舌下免疫療法、の5つです。以下に、それぞれについて説明します。
1.抗原の回避・除去
アレルギーは抗原と接触することでアレルギー反応が引き起こされるので、抗原を回避・除去できれば理論的には症状は出現しません。しかし現実の生活で抗原を完全にシャットアウトすることは困難ですので、少しでも接触する機会を減らすことが理想的になるでしょう。特にダニは、寝具・絨毯・畳・ぬいぐるみなどに多く存在するので注意が必要です。それらも含め、具体的には下記のような対策が挙げられます。
  • 花粉情報をチェックして飛散が多い日の外出を控える
  • 花粉時期の外出時に、マスク(濡れガーゼを挿入したものはなお良い)の着用
  • 花粉時期の外出時に、メガネ(特にゴーグルタイプ)の着用
  • 外出から帰った時には外で衣類をよくはたいて、家内に花粉を持ち込まない
  • 花粉時期には洗濯物を室内干しする
  • 寝具に掃除機をかける(ダニの除去)
  • 防ダニ加工の寝具を使う
  • ぬいぐるみを周りに置かない
  • 絨毯や畳を止め、フローリングの床にする
  • ペットを飼わない(ネコアレルギーなどの場合)
2.薬による治療
アレルギーの薬というと眠くなるイメージがありますが、それは一昔前の話で、現在は眠気も抑えて効果も強い薬が開発・使用されてきています。薬局で売っている市販の薬はまだまだ眠気の強いものが多く、成分はカゼ薬と大差ありません。個人個人で症状や程度は異なりますので、せっかくお金を払うのであれば、きちんとした診察を受けてその人に最も適した薬を選ぶということが、結局は一番リーズナブルだと思います。具体的に花粉症・アレルギー性鼻炎で用いる主な薬は、下記のようなものがあります。
  • @第1世代抗ヒスタミン薬…即効性だが眠気が強い。市販の薬がこれに相当する。
  • A第2世代抗ヒスタミン薬…クリニックでの治療薬の基本。眠気の抑えられた薬も多い。
  • B抗ロイコトリエン薬…特に鼻づまりに効果あり。
  • Cステロイド点鼻薬…最近のものは効果が高く、全身的な副作用はほとんど無い。
  • D抗ヒスタミン点眼薬…目のかゆみに対して処方。
  • Eステロイド点眼薬…Dで効かないような症状が強いケースに対して用いる。
  • F漢方薬…小青竜湯、麻黄附子細辛湯など。
以上のような薬を単独または複数組み合わせて、患者さん一人一人に適するように処方していきます。特に花粉症があるとあらかじめわかっている人は、症状が始まる少し前から内服を始めると効果的だと言われています(季節前投与)。
なお、当クリニックではステロイドの注射は行っておりません。またステロイドの内服も特殊な場合(花粉症症状がかなり重症な方の導入療法として短期使用)を除いて行っておりません。注射などでステロイドを直接体に入れると確かに効果はてきめんですが、ステロイド点鼻薬とは異なり全身に及ぼす影響は大きく副作用も無視できません。花粉症が毎年のものと考えれば、そのような治療を毎年行っていくのは副作用の面でリスクが高く、とてもお勧めできるものではないと考えます。
3.レーザー治療
アレルギー疾患の中でも唯一と言っていいほど手術治療法が行えるのが、花粉症・アレルギー性鼻炎に対するレーザー治療です。鼻内の粘膜をレーザー光線で焼くことによって、腫れた粘膜そのものを焼き縮めて鼻の通りを良くして、鼻づまりに効果があります。加えて、焼かれた組織は表面が線維状にコーティングされたような状態となり、抗原が入ってきてもその場所でアレルギー反応を起こしにくくなり、くしゃみや鼻水に対しても一定の効果が認められます。
また、当クリニックで用いている炭酸ガスレーザーは医療用レーザーとして普及していますが、本来はレーザー管理区分クラス4の機器であり、レーザー管理区域を設けレーザー機器管理者による管理がなされなければなりません。私は2010年度の日本レーザー医学会の「第19回安全教育セミナー」を受講修了し、同レーザー専門医試験に合格しております。それに基づき、当クリニックにおいてもレーザー管理区域を設け十分な安全対策をしておりますので、どうぞご安心して治療をお受け下さい。
当クリニック外来で行います。まず麻酔薬に浸したガーゼを鼻内に入れ、15分ほどおいて粘膜表面を局所麻酔します。これで手術中の痛みはほとんど出ないレベルになります。麻酔後に鼻内を肉眼で見ながら、レーザー光線で粘膜を焼いていきます。レーザーを当てている時間は両側で10分ほどです。
治療後は特に出血がなければそのままお帰りいただきます。術後1〜2週間は粘膜の刺激症状と鼻内にかさぶた等が付着して、かえって鼻水や鼻づまりが一時強くなると思います。しかしその時期を過ぎると鼻症状はかなり改善し、十分に効果を実感できるようになると思います。かさぶたの掃除等のため、術後は1〜2週毎に2〜3回の通院を要します。
注意すべき点としては、レーザー治療の効果は一生続く訳ではなく、アレルギー自体が治る訳でもないということです。レーザーの効果には個人差がありますが、平均で1〜2年と考えておくのが良いと思います。ただこれでも、本当につらい時期を乗り越えられたのでもう一度希望したいという人や、受験生なので今回だけでも症状を十分に抑えたいと言って希望する人も多いです。なお、花粉症の場合は花粉シーズン中のレーザーは避けるべきで、予防的に前年の夏〜12月頃までにレーザー治療を済ませておくのが良いと思われます。
いずれにせよ、薬以外の有効な治療法として報告もされており、私自身も大学病院で10年以上に渡ってこの治療を行ってきた経験がありますので、興味ある方はお気軽にお尋ね下さい。
レーザー前後
[写真]
左:レーザー治療前の鼻粘膜で、水ぶくれ状に腫れている。
中央:レーザー治療直後の鼻粘膜で、焼き縮んだ分、空気の通るスペースが広くなった。
右:レーザー治療1ヶ月後の鼻粘膜で、粘膜自体は固く締まった状態となり、空気の通るスペースは引き続き広く開いている。
4.減感作療法
アレルギー疾患に対して、抗原をごく少量から徐々に増量して注射をしていき、過敏性を軽減させる治療法です。アレルギーに対する体質改善を目指すもので、従来の治療(対症療法)とは異なる治療法です。具体的には、ハウスダストやスギ花粉の抽出エキスを、低濃度から高濃度へ増量させながら皮内注射をします。
初回は、治療開始の抗原濃度を決定するために、数種類の濃度の抗原エキスを皮内注射します。過敏性の程度には個人差があるため、これにより有効な治療開始濃度を決定します。2回目からは週1回のペースで抗原の量・濃度を増加しながら注射を続けます。注射15分後に皮膚反応の程度(発赤・腫脹)を測定します。皮膚反応が一定の程度に達したら、そのときの抗原注射量を維持量とし、この維持量のまま注射間隔を1回/2週、1回/1ヶ月と次第にのばしていきます。通常、維持量に達するまでには4ヶ月ほどかかります(つまりこの間は毎週の通院が必要です)。維持量に達した後も、皮膚反応の増強・減弱に応じて注射量を微調整することがあります。またスギ花粉症の場合は維持量後でも、花粉シーズン中(2〜4月)は注射間隔を1回/2週ほどに短くした方が、一層の効果が期待できます。
どの薬でも同じですが、安全な量でも体調等によっては副作用が出ることがあります。
・まれに皮膚の発赤・腫脹が強く出ることがあります
・喘息を合併している場合は、体調によっては発作を誘発することがあります
・ごくまれにショック症状(冷汗・血圧低下・呼吸困難など)をきたすという報告があります
万が一、副作用が生じた場合でも適切な処置を行います。
効果については個人差があります。この治療を行っても効果が認められない場合もあります。十分な効果を得るには、最低3〜5年以上の継続が必要と言われています。ただし、6ヶ月〜1年を過ぎても全く効果が認められない場合は、中止することもあります。
治療効果発現には時間がかかるので、この治療開始後もしばらくは内服治療等と併用します。症状の改善が十分認められるようになれば、内服を中止します。この治療は定期的に持続させることが大切です。当初は2週間以上あけないように注意してください。また、風邪などで体調の悪いときは治療を延期しますのでお知らせください。
減感作療法
[写真]
左:前腕皮内に抗原のエキスを注射する。
右:注射から15分後に、皮膚反応を測定する(中心部の腫れと、その周囲の赤色の大きさを計る)。
4.減感作療法
スギ花粉症とは、スギ花粉に対して体の免疫系が過剰に反応する病気です。これに対し、アレルギーの原因となるスギ花粉からの抽出物質(抗原)を、ごく少量から徐々に口内(舌下)に投与していき、体を慣れさせて免疫系の過剰反応を軽減させる治療法です。アレルギーに対する体質改善を目指すもので、従来の治療(対症療法)とは異なる治療法です。
初回は、スギ花粉症を確実に診断するために、アレルギー検査(採血)を行います。次の診察で検査結果を確認し、治療すべきかどうかを判断します。治療が適切と判断されれば、クリニック内でスギ花粉エキスの初回投与を行います。また、1週間分の自宅用のスギ花粉エキス「シダトレン」を処方します。
自宅では、1日1回「シダトレン」を決められた量、口内に投与・服用します。1週間後に再診していただき、問題が無ければ更に濃い濃度の「シダトレン」を処方しますので、引き続き決められた量を服用してください。
更に1週間後に再診していただき、問題が無ければ維持期用の「シダトレン」を処方しますので(1回1パックの使いきりで2週間分)、その後は自宅で1日1回の服用を毎日行い、定期的に受診をお願いします(当面は2週間に1回)。
どの薬でも同じですが、安全な量でも体調等によっては副作用が出ることがあります。
・ 口内の痒みや違和感が出ることがあります
・ 喘息を合併している場合は、体調によっては発作を誘発することがあります
・ ごくまれにショック症状(血圧低下・呼吸困難など)をきたすという報告があります
万が一、副作用が生じた場合でも適切な処置を行います。
効果については個人差があります。この治療を行っても効果が認められない場合もあります。十分な効果を得るには、最低3年以上の継続が必要と言われています。ただし、6ヶ月〜1年を過ぎても全く効果が認められない場合は、中止することもあります。
この治療は定期的に持続させることが大切です。治療効果発現には時間がかかるので、この治療開始後もしばらくは、花粉症時期に内服治療等と併用が必要になります。症状の改善が十分認められるようになれば、内服の頻度も減らせるでしょう。
また、ひどいカゼ症状や発熱・激しい咳など体調不良の際や、口内の傷・炎症・治療などの際は、副作用が出やすくなりますので一時的に治療の中断が必要です。そのような場合は受診をお願いします。
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良性発作性頭位めまい症に対する運動療法
耳鼻科で診療する耳が原因のめまいのうち、良性発作性頭位めまい症は運動療法という特別な治療が有効と言われています。このめまいの原因は、前庭の三半規管の中にある耳石(小さな砂粒で、これが動くことによって体の動きを感知)が本来ある場所からずれてしまい、頭を動かす際に余計な刺激を与えるためです。つまり、このずれてしまった耳石を戻すなり刺激を与えない場所に移動するなりすれば、めまい症状の改善が図れます。通常の生活を続けていれば、耳石が再度移動するとともに、めまい発作は繰り返しつつも徐々に弱くなってやがて消失します。運動療法はこうした耳石を再び動かして刺激を与えない状態に持っていくのが目的です。運動療法にはいくつかありますが、患者さんの状態に応じて適するものを選んだり組み合わせたりしつつ、経過をみていきたいと思います。
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補聴器外来について
補聴器の適応があり、またご本人にも希望があれば、当クリニックの補聴器外来に来ていただいております。診察日の午前9:30から11:30まで30分刻みで1人ずつ、予約枠を設けております。補聴器外来受診の必要検査としましては、聴力検査(一般的な聴力検査)と語音聴力検査(言葉の聞取り検査)を行っていただく必要があります。補聴器相談などこの外来を担当しているのは、専門の補聴器業者の者です。補聴器の選定までには無料で貸し出しも行い、試用することができます。個人個人で聴力の状態も異なるため、適した機種をうまく選定し、十分な調整を行っていく必要があります。これらについて、専門的見地から親身になったアドバイスが受けられます。また、聴覚障害で該当する方には、身体障害者の診断書等の書類作成も行います。
補聴器について希望の方は、お気軽にお尋ね下さい。
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アトピー性皮膚炎に対する治療のコツ
アトピー性皮膚炎はアレルギーが関与する皮膚の慢性疾患であり、短期間で治してしまうことは不可能な病気です。辛抱強くきめ細かく上手に付き合っていくことが、結局は本人のためになります。ちまたに溢れる怪しい民間療法などについフラッとしがちですが、こうした情報に惑わされることなく、正しい知識を持ってしっかりとした対応をとってほしいと思います。
アトピー性皮膚炎では、皮膚そのものは乾燥傾向で皮膚のバリア機能が弱くなっており、刺激に対して傷付きやすい状態になっています。その状態で、かゆみのために皮膚を掻きむしるので余計に病変をひどくしてしまいます。このためアトピー性皮膚炎の治療は、できてしまった病変(炎症)そのものを抑える治療に加え、かゆみを抑えたり乾燥に対して保湿剤を使用したりと、病状を悪化させない治療・処置が必要になります。具体的には、以下に挙げる4つの大きな治療の柱を考えると分かりやすいでしょう。
1.外用薬(塗り薬)
ステロイドというと無条件で拒否反応を示す方がいますが、アトピー性皮膚炎の治療に全くステロイドを使わないことは難しいでしょう。むしろ、ステロイドの利点・欠点を十分に理解した上で上手に使用することが、治療成功の近道になると思います。大事なのは、必要な時期に、必要な強さのステロイド剤を、必要な量だけきちんと使うことです。勝手に使用を中止したり、弱いステロイドを効果が出ないまま漫然と使ったりすることは、症状をかえって悪化させて副作用のリスクを高めます。ステロイド軟膏にはそれぞれ強さがあり、年齢・重症度・部位に応じて適切な強さのステロイド薬を使うことが重要です。1日2回、朝と夜入浴後など、時間を決めて使用するようにしましょう。状態がよくなれば、徐々に減量して休薬することも可能になります。一方、長期使用の副作用として皮膚が委縮したり色素沈着を起こしたりするので、首から上には極力使用しないようにしたいところです。
免疫抑制剤の軟膏です。名前からかなり強い薬ではないかという印象を持ちやすいですが、通常の用法で皮膚に塗る限りにおいては、現在まで重大な副作用などの報告はなく、ステロイドよりも使いやすい薬と言えます。利点としてはステロイドに見られるような皮膚委縮などの副作用がないことと、特に首・顔面の皮膚病変に極めて有効な点が挙げられます。軽度の副作用としては、初めて使用する際には皮膚の刺激感が多く認められますが、そのほとんどは数日塗り続けると消失します。また、掻き傷のびらん面や潰瘍の部位には塗れません。0.1%の大人用(16歳以上)と、0.03%の小児用(2歳以上)があります。
亜鉛華軟膏が代表的です。掻き傷のびらん面や潰瘍の部位に、ステロイドを塗った上から傷を覆うように塗る(というよりは盛り付ける)と良いでしょう。傷の面が保護され、治りがよくなる印象があります。
2.内服薬
かゆみを抑える目的で、第1及び第2世代の抗ヒスタミン薬が使われます。かゆみを減らして皮膚を掻きこわすのを防ぎます。
3.スキンケア
アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下しており、乾燥して非常に荒れやすくなっています。また炎症を悪化させないためにも、皮膚を清潔に保つことが重要です。次のようなスキンケアを心がけましょう。
皮膚を清潔に保つためにも、毎日の入浴・シャワーが重要です。特別なものをあえて使う必要はありませんが、石けんやシャンプーはあまり洗浄力の強いものや香料・添加物の入ったものは避けましょう。乾燥皮膚用のコラージュDなどを用いるとよいでしょう。あかすりなどで強くこするのは厳禁で、一番良いのは手(または柔らかいガーゼ)で優しく撫でるように洗うのがよいでしょう。石けんやシャンプーが残らないように十分にすすぎ、入浴は高温のお湯は避けましょう(ほてりやかゆみが生じるため)。
皮膚の保湿も非常に重要です。ヒルドイドなどが処方されますので、乾燥した皮膚に直接、または軟膏を塗った後に上塗りとして使用して下さい。特に入浴後は速やかに塗ることと、冬場の乾燥時は特に気を付けてください。皮膚症状が外見上良くなったように見えても皮膚機能自体は弱いままですので、自己判断で中止せずにひたすら塗り続けるのがコツです。
日常的に使うクリームやローションとして市販薬でも有効なものがあります。特に花王キュレル薬用クリーム・薬用ローションなどのシリーズは使い心地もよく、私も自分の子供に使用した経験からお勧めできます。また白色ワセリンはべたつきが強いですが、安価な保湿剤として薬局でも入手しやすく、覚えておくとよいでしょう。
強い日差し(特に夏場の紫外線)は皮膚に炎症を起こすので大敵です。帽子・長袖・日焼け止めクリームなど、UVカットに心がけましょう。またお子さんでは、下着や服を低刺激の木綿にする・爪をまめに切ったりミトンをしたりと掻きこわしを防止する・皮膚に当たる髪の毛は切るか束ねる、などの工夫も有効です。
アレルギー性鼻炎やぜんそくほど直接的ではないにしろ、アトピー性皮膚炎もアレルギー疾患の1つです。鼻炎やぜんそくの悪化はアトピー性皮膚炎にも決して良いことはありませんし、アレルギーを引き起こすダニ・ハウスダスト・カビなどの抗原が減ることで、皮膚症状の改善も期待できます。身の回りの環境を整えることも、大事な治療の基礎になります。
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